*注意*
この話はオリジナル設定で書かれています。 そういうのが苦手な方は、見られないほうが賢明です。 ちなみに ククル……27歳 アーク……24歳 フィニア……アーククルの娘、8歳くらい? でお届けしますっ。
あ、しまった、今ので話の大筋がバレた……
何処の家庭でも、朝というのは大抵、慌しい。
学校へ、職場へと家族を送り出すために、母親は奔走する。
朝食を作る傍ら弁当を作る。さらに、家族が中々起きてこない場合は、台所と寝室を往復しなければならない。
母親にとって、朝という時間は日々戦場だ。
ククルはそう思って溜息を吐いた。
今も、そろそろ起きなければ遅刻するというのに、娘がまだ起きてこない。
仕方なく鍋の火を止めて、ククルは娘の寝室へと向かった。
「フィニアっ! 遅れるわよ〜!」
「はーいっ」
部屋を覗いてみると、娘はパジャマから着替えている最中だった。
「まったく、いつまでたってもねぼすけさんなんだから」
とりあえず起きていることは確認できたため、また台所へと向かう。
朝食の時間は、もうすぐだ。
「それでね、アレク君たちがウチに遊びに来たいって。呼んでもいい?」
「ええ、良いわよ」
「わーいっ」
「あ、ほら早く食べちゃわないと、時間が」
急いでご飯を頬張る娘の姿に、ククルは目を細める。
どんなに遅刻しそうな時でも、朝ごはんは欠かさない。それはククルが普段から言っていることだ。
そのために自分も、どんなに眠くても早起きして朝食を作る。
ある種の使命感みたいなものに燃えているが、それでも毎日美味しそうに食べてくれる娘の姿は嬉しい。余裕があれば、食べながら、今日の学校の予定や、最近の出来事を話したりもする。
慌しい朝の中で、唯一ゆったりした時間が流れる。
「ごちそーさまーっ!
行ってきまーすっ!!」
「はーい、気をつけてねー!」
元気な声と共に駆け出していった小さな姿を見送り、ククルはまた一息吐く。
急に家の中が静かになった。
……いや、今日は静か過ぎる。
「まさか……」
踝を返す。出来るだけ音を立てず、寝室へと近付く。
予想通りだ。 ククルは息を吸った。
「アークッ!!
いい加減に起きなさいッ!!」
あの日々から、どれだけの年月が経っただろうか。
世界の崩壊を防ぐために、戦っていた時があった。
今、住居にしている場所は、元々、戦闘の拠点として使われていたものである。
闇の支配者を封印するために、トウヴィルの地に古の時代より護られてきた神殿。
その場所にククルは1人留まり、巫女として封印を守り、あるいは聖母として勇者たちの支えとなった。
やがて、戦いは終わった。
闇黒の支配者を倒し、仲間たちはそれぞれの道を進むことになった。
一行のリーダー、勇者であるアークは、故郷・トウヴィルに戻り、ククルと生活を共にすることになる。 それが、二人の約束だから。
家族を送り出した後の静けさに浸る時、ククルはふと18歳の頃に戻った気分を感じることがある。
世界を守るために戦っていた頃はずっと1人で神殿を守り続けてきたため、1人でいることには慣れている。
とは言え、だだっ広い神殿に1人だけなのだ。一抹の寂しさを感じないこともない。それは今も昔も同じだ。
ただ当時と違うのは、今は帰ってくるはずの人を不安に駆られながら待たなくて済む、ということだ。
それだけで、自分は頑張れる。
「不思議なものね」
今と昔、違うようで似ている。
でも、当時の自分からは想像も出来ない、今の生活。
けれど、今の生活に没頭してしまえば、昔を忘れてしまう。
ひたすら平和な生活を望んだことも。
死が、今、目の前に迫っている。
「そんな力でこの私を、倒せるとでも思っていたのか?」
何故?
何故アイツは平気なの?
私の力じゃ敵わない?
このままだと
死ぬ?
私が?
いいわ。
世界のためなら。
本当に?
待って。
約束は?
約束。
破ってしまう。
イヤよ。
イヤ。
あなたはどうなる?
恐い。
怖い。
コワイ。
ア
ー
ク
‥‥
声にならない、自分の叫びで、目が覚めた。
「夢‥‥?」
あるいは、自分の内にある恐怖心か。
闇と戦う日々はとうに終わったというのに、未だに見続ける映像。
時々、わからなくなる。
もしかしたら、今の生活は、18歳の自分が見ている夢なのではないだろうかと。
夢だと思い込んでいるものこそが現実で、本当の自分は‥‥
「ここに、いたんだ」
ふいに降りかかる、温かい声。
「部屋にいなかったから、探したよ。
まさか、祭壇の間にいるなんて」
近付いてくる、優しい声。
ぬくもり。
それが待ちきれなくて、ククルは、アークの胸に飛び込んだ。
「アークッ」
アークはククルの体を受け止めたものの、あまりの突然の出来事に、ただ驚くしか出来ない。
しかし、それに構わず、ククルは思いの丈を打ち明けた。
「夢じゃ、ないわよね?」
「こうしてあなたと一緒にいられること、夢じゃないわよね?」
「私たち、暗黒の支配者を倒して、世界に平和を戻せたのよね?」
「それで、私たち一緒に‥‥」
あまりの錯乱ぶりに戸惑いを見せるものの、アークはすぐに把握した。
恐れていたのだ、彼女は。
自分1人が、先に闇に飲み込まれてしまうことを。
自分がいなくなってしまったら、その片割れも生きてはいけなくなってしまうことを。
ただ、ただ愛しい。
「大丈夫だ」
呼吸が出来なくなるくらい、強く抱きしめて。
「世界は、無事だ」
「仲間はみんな世界へ散っていったけど、僕と君は結婚した」
「可愛い女の子ももうけた」 「そして‥‥」
強く抱きしめていた腕を緩めて、お互いの顔が見える距離まで離れて。 相手の瞳に自分が映ったことを確認する。 その途端、アークは微笑んだ。
「今日が、君の27歳の誕生日だ」
お誕生日おめでとう。
悲壮に満ちていたククルの顔に、一気に赤みが差す。
「あ」
「覚えてなかった?」
顔を赤くしたまま黙り込んでしまったククルを見て、アークはくすくす笑った。つられてククルも笑い出す。
ようやく、笑顔が戻った。
「さ、行こう。みんな待ってる」
「みんな?」
「エルクたちにフィニアが頼んだみたいだな。一緒にお祝いしようって。
フィニアの学校の友達もいるみたいだ」 「まあ! フィニアったらやるわねー」
笑いながら、アークに手を引かれて、外へ向かう。
その様は、花嫁が花婿に連れられて、教会から出てくるようだ、と頭のどこかで考えた。
ああ、こんな幸せ、想像も出来なかった。
神よ、感謝します。
******** あとがき ********
誕生日に間に合わなかったl|li_| ̄|○il|li 思いっきりオリジナル設定でごめんなさい。 良いんです、妄想です。フィニアはアーククルの娘だと主張したい!! 頭の中では日々、リコルヌ一家の団らんが繰り広げられてます。 ちなみに、アレク君は、フィニアの1歳年上の友達です。学年違うけど、人数少ないからクラスは一緒ってやつです。田舎(トウヴィル)万歳。 本当はもっと「毎日の生活の中に隠れてる、ささいな幸せ」みたいな感じにしたかったんだけどなー。 ちなみに、朝の光景は、ウチの家族をモデルn(略) あと、My年表によると、今年でククルさんは27歳です。一般に思われてるのより一つ年上だと思われ。 無駄に長くてスミマセン;;
作者: ほるん
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