帰蝶 |
蝶が、いた。
美しい蝶だ。
日の光に透ける紫の翅。
後肢の先は朱に染まっている。
この世のものとは思えぬその姿。
神の作り給いし“造形物”。
其れが、籠の中に飾られている。
水も、食べ物も、空気も、情報も、何一つ不足は無く。
多くの人に愛でられ、多くの人を魅了し続けるのであろう。
恵まれた環境で。
与えられた世界で。
何の不自由も無く。
自由も無く。
いや、確かに自由は在る。
自由を求めなければ。
だが、蝶は手を伸ばした。
俺は思わず、その手を取っていた。
――――欲しいのか?
そうなのかもしれない。
――――“作品”を容易く手放すことなど
どうすれば良い?
――――堕ちることになっても?
構わない。
――――何を望む?
“彼女”の願いを。
――――お前は何を捧げる?
俺自身の全てを。
かくて、契約は成った。
蝶は、檻から放たれた。
世にも奇なる蝶がいた。
高貴を表す紫の髪。
雪のような白い肌。
ほんのり色付く唇。
紫水晶のような瞳。
全てが、空に融けてしまいそうな存在。
髪を結い、白粉を塗り、紅をさし、衣を着飾れば、
さぞや美しかろう。
金襴豪華な部屋で、傅かれたろう。
だが、“蝶”は外へ出た。
何一つ不自由ない世界の中で自由を叫び、
何もかも不自由な世界で自由を知った。
たった1人の導きのままに。
伸ばした手の先に、触れる。
蝶が、俺の腕を掴む。
そっと抱きしめる。
俺のものだ、と。
俺が籠から出したのだ、と。
叫んだところで、どうにもならない。
季節が巡れば、蝶は消える。
ほんの短い瞬間を、ただ愛でられるがために生きる。
そして、空へ帰る。
――――喪いたくない。
蝶は、力強く羽ばたくための翼を持たない。
ただ、頼りなさげに舞う。
けれど、己の居るべき場所を知っている。
蝶は必ずその場所に帰る。
空へ帰った蝶がいた。
その蝶は空を知らず、
空の高さも、空の青さも、空の広さも知らなかった。
だから、空に憧れ、空を求め、空へ帰った。
無限を秘める、自由の場へと。
ただ1人の帰る場所へ、導かれるままに。
アトガキ
とりあえず
蝶=ククル 俺=帰る場所=アーク で。一応。
アーククルっぽくない上に、小説かも疑問ですね。
場違いだったらごめんなさい。
ククルはアークによって籠から出されたのよ、という話。
内容よりタイトルに反応した人がいたら嬉しい。
“帰”という漢字は“嫁ぐ”という意味があるそうですね。
作者: ミネリコ
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